PUZZLE × 井上都【略歴】
第1回 (2014.10.8)
父の遺した手帳には「人間のクズ」と書いてあった。私のことだ。
肺癌が食道にまで浸潤したための痛みで座っていれば両脇腹が、・・・<続きを読む>
第2回 「雨傘」 (2014.10.22)
「座長、雨が降ってますよ」
出掛けようとしていた母の背に誰かがそう言った。母が座長になり父を座付作者として抱えるという形で旗揚げをした劇団も・・・<続きを読む>
第3回 「思い込み」 (2014.11.12)
サイレンの音が猛烈に響く中を、この世の終わりといった様子の父を助手席に乗せ私は車を運転して家へ帰った。・・・<続きを読む>
第4回 「雪 1」 (2014.11.26)
母が「男と駆け落ちした」というには、かなり違った状況にあった。私からすれば、私から見ればであるけれど。・・・<続きを読む>
第5回 「雪 2」 (2014.12.9)
自棄になってはいけないとつくづく思うのだ。どうなったって構わないと投げやりになってはいけない。崩れていこうとしている日常を食い止めるのは、おそらく・・・<続きを読む>
第6回 「雪 3」 (2014.12.24)
肩を寄せ合い頭をくっつけ合って眠る妹達を前に私は一睡も出来なかった。夜行列車の座席は90度の直角のまま私達を労わってもくれない。・・・<続きを読む>
第7回 「オレンジ色のドア」 (2015.1.14)
父と母が最初に持った家は千葉県・市川市の下総国分寺裏の建売住宅だった。小さな道の両脇に同じような造りの家が全部で10軒、長屋のように並んで建つうちの一軒で隣りには母の姉である伯母家族が住んでいた。・・・<続きを読む>
第8回 「噂」 (2015.1.28)
思い出したことがある。
私が妹達を伴って北国へ母を迎えに行ったことは前に書いたが、あのとき父が高崎まで行ったのは・・・<続きを読む>
第9回 「春のリゾット」 (2015.2.11)
「旅先で会ってるぞ」
記憶はなんて頼りないのだろう。母と男の縁が切れていないことを知ったあの夜は、いったい何月だったのか。・・・<続きを読む>
第10回 「子供が小さいままでいたら」 (2015.2.25)
本屋さんで時間を潰していたらケストナー作『人生処方詩集』を見つけた。懐かしくなり思わず手にとった。・・・<続きを読む>
第11回 「あのとき」 (2015.3.11)
「劇団の代表を俺に代わって君がやってくれると助かるんだけどな」
父が受話器の向こうでそう言った。・・・<続きを読む>
第12回 「四月」 (2015.3.25)
四月九日は父の祥月命日である。
五年前のその日に父は死んだ。入院していた茅ヶ崎の病院から救急車で鎌倉の自宅まで送り届けてもらったその日の夜に亡くなった。本当に、死ぬために帰って来たように。・・・<続きを読む>
第13回 「遺留分減殺請求」 (2015.4.8)
だいたいが「遺留分」などという言葉をそれまで私も妹も聞いたことがなかった。それはいったい何なのか…? まったく判らなかった。・・・<続きを読む>
第14回 「駅にて」 (2015.4.22)
確かにほんの少し小高く盛り上がったところにホームらしきものが見える。
私は今年16才になる息子と一緒に、父の生れ故郷である山形県・東置賜郡川西町にあるフレンドリープラザの裏出口から表へ出て・・・<続きを読む>
第15回 「声を聞く」 (2015.5.13)
父の声が聞えたわけではない。
聞こうと耳をそばだてても、私には聞き取ることが出来ないようだ。・・・<続きを読む>
第16回 「父の声」 (2015.5.27)
妹に届けられた1枚のCD。父の死の10日前に病院のベッドの上で吹き込まれた父の声。
「こんな怒ったパパの声、聞いたことない」と妹は泣いていた。・・・<続きを読む>
第17回 最終回 「家族」 (2015.6.10)
『パズル』というタイトルは、劇作家だった父が書き上げることなく途中で筆を止めた戯曲『パズル』から、無断でとってつけた。・・・<続きを読む>