小泉すみれの最新ドラマ時評 小泉すみれ

 

第三回 『ごめんね青春!』



私は『あまちゃん』を愛している。およそ1話のなかに2本から3本のショートコントが入っているテンポに心地よさを感じながら視聴していた。


そんなわけで『あまちゃん』後初となる宮藤官九郎脚本のこの作品が自分のなかに流れている<あま体感>をどう衝き動かしてくれるのか、スタート前から興味があった。


が、開始して早々、いきなりナレーション担当が主人公の部屋に置かれた<観音菩薩像>(森下愛子)なのであった。出会い頭の、粋な<ホラ話テイスト>にやられ、なんだかホンワカしちゃってるうちに、一気にこの物語に引き込まれ、好きになっていた。


どうやらその<観音菩薩像>には主人公である教師(錦戸亮)の、3年前に亡くなった母親みゆき(森下愛子)の魂が宿っているらしい。「はじめまして。わたくし主に進行役を務めます観音菩薩です」なんて挨拶から入ってくる礼儀正しさに爆笑しつつ、「ああ、この感覚!」となにか思い当たるような懐かしさを覚えた。


なんなんだろう、この<懐かしさ>は。確かに、現代を舞台にした学園モノとはいえ、『ごめんね青春!』に出てくる男子生徒たちの大仰な動きや仕草には昭和臭漂うレトロ感があるのだが……。


ちょっと考えて、思い出した。そうだ。久世光彦演出の連続ドラマ『ビートたけしの学問ノススメ』(’84年TBS)の感じじゃないか。


『ビートたけしの学問ノススメ』は『あまちゃん』のなかでも引用されていた。ビートたけしが私立ノストラダムス学院のダメ教師(夏目宝石という名前!)に扮したコメディなのだが、そのダメっぷりにはビートたけしならではのもの哀しさを誘う可憐さがあった。


その彼(たけし)が学校でなにか失敗したあと、肩をがっくりと落としながら母親(木内みどり)に慰めてもらっている姿がアタマによみがえってきた。マザコン青年という設定だった記憶があるのだが、現時点では未確認である。申し訳ない。


・・と、『ごめんね青春!』の話からそれてしまったが、なんだか久世さんのドラマを思い出せたことがうれしかった。この作品にはドラマ好きの記憶を絶妙にくすぐってくれる古めかしさがあると感じている。


このドラマでは主人公が仏像姿の母さんと対峙する自室のシーンが一番好きだ。先日の第6話では、母さんが<観音菩薩像>の姿を借りて現れるのは、主人公が心に<後ろめたさ>を抱えているときであると呈示された。じゃあ、後ろめたさを感じなくなったら母さんはいなくなってしまうのだろうか。せつないな。


母さんは主人公に穏やかな顔で告げる。

「<後ろめたさ>のメタファーだからね。母さんは<後ろメタファー>だからね」。


後ろメタファー。それを主人公ではなく仏像の姿をした母自体に言わせるという粋な展開。まさに<後ろメタフィクション>の誕生なのだった。


☆Data

ごめんね青春! TBS系毎週日曜21時~

http://www.tbs.co.jp/gomenne_tbs/


☆ひとくちメモ

<後ろメタファー>とは・・

元ネタはみうらじゅんによる造語。その造語を菩薩像に言わせるという設定に、クドカンから仏像好きのみうら氏へのオマージュを感じる一語である。