ストレンジな人びと
作家 清野かほり
連載第17回
褒められたい?日本人
最近、テレビを点けると、ちょっと複雑な気分になる。[外国人が日本のいいところを褒める]という番組が異様に多いと感じるのだ。
「ニポンジンは、みんな親切ね〜。礼儀正しいし〜」
「日本食はヘルシーで美味しい! 私の国でも大人気で〜す」
「街がきれい! ゴミ、落ちてないもんね〜」
「日本人はマナーがいいんですぅ」
「ニッポンのアニメ、チョー大好きで〜す!」
「日本は、とっても治安がいい国ね」
「日本の技術力は本当に素晴らしいですね〜! アンビリーバボー!」
美辞麗句のオンパレードだ。日本の伝統文化、様式美などに感銘を受ける外国人がいることは理解できる。もちろん日本には、世界に誇れるものがたくさん存在する。円安で外国人観光客が増加していることも、こういった番組が増えていることの要因のひとつだろう。
けれども、だけれども、である。なぜここ数年、こんなにも日本および日本人を外国人が褒め称える番組が増えているのか、私は考えてしまうのだ。なんでだ? 政治経済や東京オリンピックは関係あるのか?
——いいじゃない、どんどん褒めてもらえば。褒められれば嬉しいじゃない。
私もそう思う。確かに褒められれば嬉しいし、少しばかり自尊心もアップする。だが、もしかしたら、そこになんらかの見えづらい問題が潜んでいるからなんじゃないかと、ついナナメに見てしまうのだ。
私は生来のひねくれ者だと開き直ってこの際、言ってしまおう。
日本経済が停滞、いや、悪化してきていて、実はアベノミクスなんかぜんぜん機能していなくて、日本全体が自信と元気を失っているから、こういった番組が増えているんじゃないだろうか。
〈日本は他国よりすごい! 日本人は優れている!〉
そのメッセージの陰には、〈日本人は元気を取り戻せ! もっと日本を愛そう!〉というメッセージがまた隠れていると思う。
テレビ局がいちばん気にするのが視聴率だ。それはスポンサーを気にしているということであって、そのスポンサーはだいたいが大企業だ。
そして近頃のテレビ局は、なんだか〈役所や政府の意向〉というものに敏感だ。ニュースなどを主に扱う報道番組も大新聞も、報道することとしないことがある。つまり、国民に知って欲しいことと知って欲しくないことを選別している気がするのだ。それは、特定秘密保護法が昨年12月10日に施行されたことで、きっとこれからますます加速していくよね。
〈日本は凄い!〉とみんなが思い込むことで、何かの目眩ましになったり、誰かにとって、みんなに考えてほしくないことを考えさせないようにしているんじゃないか。そしてさらに言えば「もっと、どんどん物を買ってよ! 消費して景気を良くしてよ!」と言われている気がするのだ。
景気の浮揚? 自尊心の強化=国粋主義? 国民に自信を持たせて原発を再稼働しちゃう? 戦争に参加しちゃう? 分かりません。
だが私はこういった、なんらかの思惑で視聴者=国民をある方向に誘導しようとする動きが本当に怖ろしい。尿モレするくらいに恐い。
誰が何の思惑で、みんなをどこに導こうとしているのか私には分からないけれど。誰か知っている人がいたら教えてください。